タナカリョウの穴あきブック

「リメイク」



9月です。

ハンカチを持った兄ちゃんがフィーバーした甲子園も劇的な終焉を迎え、日差しは次第にその強さを薄めております。一般に「サライが終わると夏が終わる」と言われておりますが、ではなぜ桜吹雪なのか。そんな疑問を毎年のように感じておるワケですが、皆様、ビキニラインのお手入れ、もうしなくてイイですよ!

学校では新学期を迎え、なんとなく「第2部」的なニュアンスがある次期。テレビでも新ドラマがスタートしますね。今クールの注目は「セーラー服と機関銃」でしょう。原作は言わずもがな赤川次郎。薬師丸ひろ子主演の映画版も大ヒットし、一世を風靡したのが今から約25年前。それを予言するかのごとく、その1年前に「カ・イ・カ・ン♪」という産声をあげた私でありますが、今なお語り継がれる名作として愛され続けているようですね。ドラマ版の主演は長澤まさみ。なかなかのハマリ役になりそうです。

さてさて、名作が長い時間を経てリメイクされるというパターン、コレは映画のみならずカルチャー全般に通ずる伝統と言えますね。音楽にしても「カバー」「トリビュート」はすでにスタンダードですし、和歌の「本歌取り」もその範疇でしょう。かといって、本家をそのまま再発表しても意味はない。そこに、その時代の感覚を少なからず取り入れ、本家が持つ魅力をさらに高めている作品こそが、優れたリメイク作品と言えるでしょう。無論、マンガにだってソレはあります。ということで、今回はリメイク作をご紹介。本コラムでも少し前に「続編」について触れましたが、それとは少し違います。原作に新たな命を吹き込んだ名カバー。さあ、ガッテン!

「PLUTO」 作・浦沢直樹 〜3巻続刊中 小学館

言わずと知れた超人気作品ですが、コレはハズせないでしょう。原作は手塚治虫の代表作「鉄腕アトム」の「地上最大のロボット」という話。こちらはもちろんアトムが主人公で、簡単に言えば世界的に有名な7体のロボットを破壊しようと目論む「プルートゥ」とアトムが戦う話なんですが、「科学と人間の共存」という「アトム」全体のテーマが色濃く出ており、ファンには人気があったようです。



対して浦沢氏は、主人公を7体のロボットの1体であるゲバルトに設定し、彼が暮らす舞台に人間を多く登場させ、ロボットと人間の微妙な距離感を出しています。原作ではあっけなく破壊されてしまうロボットにも緻密なサイドストーリーを構築し、浦沢氏自身のカラーがうまく表れています。マンガ界では異例とも言えるプロデューサーが付いているだけあり、かなりじっくりと練られている感じが見て取れますね。なお、今回のリメイクに関して手塚プロは「原作と同じではなく、浦沢直樹なりのアトムにしてほしい」という条件が付けられたようです。ここまでの信頼を得られる浦沢氏の凄さが再確認できます。原作はわずか180ページ余り。すでにそのボリュームを超えている浦沢版アトム。原作と同じラストをもってくるのか否か、今後の展開に目が離せません。




「COMIC CUE Vol.2」 イースト・プレス

江口寿史が1995年に創刊した年1回発行の漫画専門誌。今をときめく南Q太や小田扉、黒田硫黄といった逸材を早くから登場させるなど、江口氏の並々ならぬ眼力が存分に発揮されています。1冊ごとにテーマが設定されているのが特長で、「手塚治虫トリビュート」や「もし、ドラえもんの秘密道具があったら?」といった試みもされていますが、なかでも創刊2号目となる本誌が秀逸。松本大洋の「ドラえもん」や泉昌之の「おそ松くん」、いましろたかしの「釣りキチ三平」などなど、原作をいい意味で“無視”した作品が満載です。松本大洋に関しては、ドラえもんはネコですしね。しかしながら原作者へのリスペクトが誌面からプンプン伝わってくる。古本屋などで簡単に手に入りますので、ぜひご一読を。


ちなみに同誌は9号の次に「100号」を発行。その次からは「200号」「300号」とやりたい放題です。年1冊というスパンが心地イイですね。



「AMON デビルマン黙示録」 作・衣谷遊 全6巻 マガジンZコミックス

個人的には20世紀ナンバー1の作品、永井豪による「デビルマン」。悪魔とはなんなのか?そんな哲学的要素を多分に孕んだ名作ですが、恐れ多くもそれをリメイクしてしまったという問題作。暴徒と化した人間たちが牧村家を襲い美樹を殺害するシーンから本作はスタート。これによりデーモン族の勇者である「AMON」が乗り移った“デビルマン”こと不動明は心を閉ざすワケですが、その後は急に古代悪魔界に舞台がチェンジ。サタンやシレーヌといったキャラクターのエピソードが多いためファンは楽しめる内容ですが、良くも悪くも「原作の補完」に留まっている感は否めませんね。5巻からは原作のストーリーに戻るのですが、やはり原作ほどのインパクトは感じられず。ただ、タッチを大幅に変更して新たな世界観を作り出した功績は大きいと思います。原作を読んだ後に楽しんでほしいですね。



原作が過去に評価を受けている分、リメイク作には相応のプレッシャーが付き纏うのは必然。それを乗り越えられる精神力と才能が必要とされるからこそ、マンガのカバー作は音楽のソレに比べて少ないのかもしれません。ひょっとしたら、オリジナルよりも難しいのかも。だからこそ、優れた“オリジナル”を伝える意味でも、カバーはどんどんやってほしい。「受け継ぐこと」って、難しいよなぁ……。


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