タナカリョウの穴あきブック
第23回「マイナー」
3月です。
トリノオリンピック、終わりました。
日本人選手の結果はともかくとして、今回も様々なドラマがありましたね。
冬季オリンピックは採点競技が多いため、時として順位に不満が出ることもありますが、一瞬にかける選手たちの思いというのは、理屈抜きに美しいものです。
原田に条治に清水に岡崎に荒川に村主にミキティに高橋に童夢&メロ、みんな、よくやった!
しかし、冬季オリンピックは夏季のそれに比べて、いささか地味な気がするのは僕だけでしょうか。夏がメジャー、冬はマイナー、だと感じてしまうんですね。もちろん、普段から雪山と密接に絡んでいる方は別なんでしょうけれど、同じ「オリンピック」の冠をつけている分、どうしても比較してしまう。これは、完全に個人の感覚です。「オリンピック」よりも「パラリンピック」の方がメジャーだという人もいるでしょう。我々が「メジャースポーツ」だと思っているベースボールでさえ、次回の夏季オリンピックの公式種目ではなくなる可能性が非常に高い。所詮、先進国のみで流行しているスポーツなんですね。
要は、個人の価値観なんて所詮そんな程度のものだということです。多数決では負けてしまうこともある。でも、当事者としては、確固として譲れない理由があるはず。メジャーかマイナーかという物差しのみで計ることはできないんです。だからこそスポーツ選手のように、1つのことに打ち込んでいる人間というのは眩しく見えるのですね。
さて、今回の穴あきブックでは、超「メジャー」作家の、いわゆる「マイナー」な作品をご紹介。僕個人がそう感じている作品ですので、「あの人にマイナーなんてない!」というファンの方がいらっしゃったらゴメンちゃい。処女作で大人気作家になったという方は少ないんですが、その人を語るうえで欠かせないのが「人気が出なかった」作品。こういったモノのほうが、作者がやりたい放題やってたりもするんです。チェキ。
「さくらんぼ爆弾」 作・柴門ふみ 全1巻 小学館

「あすなろ白書」「東京ラブストーリー」をはじめ、書く作品のほとんどがドラマ化され、90年代トレンディドラマの代名詞ともいえる作者。最近では「小早川伸木の恋」でもおなじみですね。彼女の80年代における代表作とされるのがこの「さくらんぼ爆弾」。音楽制作会社に勤める野山まゆみ25歳は、電話番&雑用ばかりの毎日に嫌気がさしていた。刺激を求め、彼女が出した結論は「不倫したいっ!」。とはいえ破天荒キャラのハチャメチャ物語ではなく、恋と仕事に振り回される女性の姿をちょっぴりクールな視点で綴った名作。なんだかんだでウルッとさせる柴門作品、本作もその例に漏れず、男性でも楽しめるでしょう。

余談ですが、彼女は昨年の夏に「ぶつぞう入門」という書籍を出しており、みうらじゅんよろしく全国の仏像を巡っては「ニコラスケイジみたい〜」などとのたまっております。恐らく漫画界ナンバーワンの「うんちく好き夫婦」だなぁと感じる次第ですな。※ちなみに彼女の夫は「島耕作」の弘兼憲史です。本コラムでは何度もこの話題が……
「バオー来訪者」 作・荒木飛呂彦 全2巻 集英社

最終生物兵器の寄生虫「バオー」を取り込まれた少年と予知能力を持つ少女。2人を追う政府機関「ドレス」からの逃避行を重ねながら成長していく2人を描いた作品。「バオー」は脳の寄生虫で、宿主に危険があった場合に覚醒。恐ろしいまでの力を発揮しますが、宿主のコントロールが効かなくなるのです(なんだか似たような映画がありましたが、題名失念)。アメコミ風のキャラクターや緻密な構図、「ウォーーーーーーーーーーム」「バルバルバルバル」といった異質な擬音は、彼の代表作「ジョジョ」にもバッチリと引き継がれています。

本作もジャンプ作品なんですが、連載時はさほど人気がなかったようです。しかし終了後からジワジワと人気を集め、劇場アニメ化までされました。そういえばジョジョのアニメ劇場版が今年公開されるそうですね。3年ほど前に流れたハリウッド実写版の話はどうなっているんでしょうか。「ムダムダムダァ」にならないことを祈っています。
「カメレオンジェイル」 作・井上雄彦 全2巻 集英社

1億冊を売り上げた「スラムダンク」、現在も爆発的ヒットを重ねる「バガボンド」など、もはや日本漫画界でなくてはならない存在、井上雄彦御大。彼の初連載作品がコチラ。自由に顔を変えることができる「危険請負人」ジェイル。警察の範疇を超えた難事件を、相棒とともに解決。わずか12週で打ち切りとなってしまいましたが、テンポの良いストーリーは非常に読みやすく、万人が楽しめる作品だと思います。その後、短編をいくつか発表し、名作「スラムダンク」を書き上げるワケですが、彼の絵において最も特筆すべきが「涙」シーン。現在ヤングジャンプにて不定期連載中の「リアルは、それが顕著に表れています。車椅子バスケというとっつきにくいジャンルのストーリーながら、読むものを引き込ませる画力がある。これこそが井上作品最大の魅力ですね。
ここまでお読みになって、「それはマイナーちゃうで」という方、たくさんいらっしゃるでしょう。
そう、マイナーとメジャーは表裏一体。そこに意味はさほどナイ。
カテゴライズに流されないように、確固とする価値観、必要ですね!
えっ? オチてない? ちゃんちゃん。
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