タナカリョウの穴あきブック

第14回「逃避行」

ハイ5月です。1年で最も過ごしやすい気候が続くこの季節、皆様いかがお過ごしでしょうか?5月といえばゴールデンウィーク。今年は最大で10連休と、かなりのボリュームでしたね。旅に出た人、仕事に追われた人。家に籠もった人。その温度差が出てしまう皮肉な時期でもあります。皆様はどのような連休をお過ごしになりましたか???

僕の会社のスタッフのうち3人は、休みをずらしてL.Aへと旅立ちました。「おみやげ何がイイ?」って聞かれたので、「ご無事に帰って来てくれたらソレが一番です」などと答えておいた小生24歳。すっかりオトナの会話ができるようになってきた今日この頃です。

僕はといえば、クラブイベントを除いては特に予定もなく、ダラダラと過ごしておりましたね。そんなときこそやらねばと、寝る前には常に妄想トリップを実践していました。ニューヨーク・バンコク・ソウル・クウェート。持ちうる最大限の空知識を総動員し、様々な場所を訪れる想像をしながら眠りについていた寂しい輩でございます。そういえば就職活動をしていた頃、「趣味は何ですか??」という質問に「幽体離脱ごっこです」と二日酔いの頭で答えたことがありました。そのやり方を3分間ほどかけて事細かに説明しましたが、面接官は3人中2人顔が引きつっていたのを覚えています。まあ、その面接は無事通過できましたが。誰しも多かれ少なかれ逃避願望があるのではと感じたのもこの頃でした。

今回は、そんなことを思い出しながら最近読み返した作品をご紹介。アニメ化に伴い復刊を果たした奇跡の名作でございますよ。ほれ


「マインド・ゲーム」作・ロビン西 全1巻(復刊前は全3巻)飛鳥新社

漫画家を目指すフリーター西は、初恋の相手みょんと偶然再会。彼女が姉のヤンと営なんでいる焼き鳥屋へ向い、彼女にフィアンセを紹介される。そこに現われた2人組の借金取り。様々な事情が絡み、遂にブチ切れたヤクザの子分は、ピストルを振り回したり、みょんの服を剥ぎ取ったりとやりたい放題。ビビった西はカウンターの下に塞ぎこむも、ケツに銃を突っ込まれ、それにキレて「しばく!」と言おうとした瞬間に死亡。黄泉の世界で、自分の死に様を見せつけられた西は、神様に逆らい反対の方向に全力で走り出す。消えそうな体を「消えない」と信じ続け、遂には現世へと戻るチャンスを与えられる。気づけば、ピストルを突っ込まれた状態からリスタート。今度は同じ結末を迎えまいと、ヤクザを殺し車を強奪。みょんとヤンと共に逃走する。迫り来る追っ手の大集団。ボートに乗り込み海上へと脱出するも結局は囲まれ、絶体絶命の危機に。そこに巨大クジラが登場。3人は呑み込まれてしまう。

真っ暗な地、現実離れした空間。そこで3人が出会ったのは、30年以上も鯨の体内で暮らしているという、元海賊のジジイであった……。あらすじだけ見てみるとB級映画のような印象を受けますが、この作品、「マジ半端ねぇ」です。ヘタウマのようで計算された絵の構図。文学的な会話。随所に織り込まれたブラックな笑いのセンス。「代紋TAKE2」さながらの「一回死んでやり直す」「うだつのあがらない男の変貌」という珍しくない設定も、まったくもって気にならない。むしろ、その安易な設定こそが、作者の才覚を際立たせている感じです。

テーマは「妄想=想像⇒実現」といったところ? 簡単に言えば「信じるものは救われる」なんですが、簡単に言えるほど生易しくありません。西をはじめとする、登場人物のトリップ感。これが本作の醍醐味であります。おそろしいまでのポジティブシンキング。B型の僕にとってはかなり心地よい作品でした。




アニメのほうは、「アニマトリックス」「スプリガン」などでお馴染みの映像集団「STUDIO 4℃」が制作。こちらはまだ未見なんですが、相当期待しています。DVDになっていますので、ご購入された方はぜひ、貸してください(笑)。山本精一が手がけた音楽にも注目。

誰しも描く夢、理想。それを実現していくか否かは本人次第ですが、まずは「信じる」ことから。月並みな言葉ですが、これさえもなかなかできないもんです。そんな人は「想像する」ことからはじめましょう。僕はもともと妄想癖のあるタイプなんで、この作品に出会ってから、白昼夢の回数がさらに増加しましたね。

夢や野望は数あれど。とりあえず、海。行きてぇなぁ…。


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