タナカリョウの穴あきブック

第11回「オーリュニーディーズラーブ♪」

毎度毎度こんにちは。早いものでもう2月。暦の上ではもうすぐスプリングですが、とはいえ寒い日が続く今日この頃。皆様いかがお過ごしでしょうか。2月のビッグイベントといえば「バレンタインデー」ですね。周知のとおり、「女性が想いを寄せる男性にチョコレートを送る」というのは日本だけ。「聖バレンタイン日」というのは、そもそもローマが発祥地であります。3世紀ごろ「兵士が戦争に行きたがらないのは家族のせいだ」という理由で、ローマ法王によって「結婚」は禁止されていました。そんな中、可哀想な兵士を見かねて独断で結婚を認めさせていた男がバレンチノ(バレンタイン)司祭。後にバレて投獄→処刑という悲運な最期を遂げたのですが、彼は獄中でも神の愛を説き続けました。彼女に「あなたのバレンチノより」という手紙を処刑寸前に残したそうです。

また同時に、ローマではある伝統的な祭りがありました。「ルペルカーリア」と呼ばれるものです。毎年2月14日、未婚女性の名前が書かれた紙が箱の中に入れられ、翌日に未婚男性がくじを引きます。引いた名前の女性と祭り期間をともにするという、なんだか楽しげなものでした。後に風紀上問題ありという事で改められてしまいましたが、この2月14日という日のスペシャル感は残りました。前述のエピソードがコレと結びつき、「あなたのバレンタインより」という決まり文句と共に、若い男性が女性に対して愛を告白する、という習慣が生まれたようですな。

男女間の愛情というものは、トータルテンボス風に言えば「永久未来半端ねぇ」感情です。憎悪や嫉妬も含めて、幾多の歴史的事件の要因にもなっております。最近でこそ、やれ女性の地位向上だの男女平等だのと声高に叫ばれておりますが、こんなものは言うまでもなく基本的意識であるべきですね。いやむしろ、女性の方が偉大であるとさえ僕は思ったりもします。「男らしさ」「女らしさ」という事実が先にあって、それを踏まえたうえで平等を謳うのは賛成なんですが、その言葉自体を某NPO団体などは否定しています。これは若干ズレているなと思いますね。話が思想系に行くと思わずアツくなる体質ですのでこの辺にしておきますが、要は「バレンタインは男からも行け!」ってことです。

前置きが長くなりましたが、今回ご紹介するのは、かの手塚治虫氏による隠れた名作。かなりのボリュームとメッセージ性を孕んだ作品です。ひうぃごー。

「人間ども集まれ!」手塚治虫・作 上下巻 ホリデーコミックス

東南アジアの独裁国・パイパニアでは、政府とゲリラとの戦いが日々激化していた。日本から義勇兵として参加した自衛隊員・天下太平は、兵役を拒否して戦場から脱走するが、幾許もなく捕縛される。パイパニア軍部は、人工授精で兵隊を作る実験を行っており、彼はその材料とされてしまう。しかし、彼の精子を見た医者は驚愕した。2本に枝分かれした、世にも珍しい突然変異の物だったのである。彼の精子から生まれた子供は、男でも女でもない第三の性「無性人間」。主人の命令には本能的に従順、無意識に集団行動をとることができる「働き蜂」のような性質を兼ね備えており、兵士や奴隷としてはこの上なく最適であった。戦争が終わると、医者・大伴黒主とイベント屋・木座神明は、無性人間を使って「戦争ショー」を行い、大儲けを企む。しかし、本来個人的感情を抱かない無性人間の中にも、反逆の意思を持つ者が出はじめた。世界中に奴隷や兵士として散りばめられた無性人間たちが、人間に対して一斉に蜂起を目論む…。

「天下太平」というモノスゴイ名の主人公と、その「子供」にあたる何百万人もの「無性人間」、交錯する欲望…。壮大なスケールで描かれた超大作であります。最初の子供=無性人間は「未来」という名前。ストレートですがココにも何か意味があるのでしょうね。



「リボンの騎士」然りですが、手塚作品には男女という性を越えた手合いのキャラクターが多々登場します。ジェンダー論というのは、彼の中で大きなテーマのひとつだったのでしょうな。加えて、「アトム」「ジャングル大帝」「ロック冒険記」さながらの「被差別者(物体)による反逆」という流れ。手塚作品の2大要素が「セックス」を通して描かれた名作です。「人を人たらしめているのは何か?」というテーマ、重すぎず軽すぎず、最高です。

この作品に限ったことではないのですが、彼は単行本発行時、作品に大きく手を加える事で有名だったようです。本作も例に漏れず、「サンデー」連載時に比べると単行本では大きく異なっております。なんとラスト約30ページ分をもまとめて削除!作者のメッセージが表れた雑誌連載最終話と比べて、単行本バージョンではやや「えっ??」って感じのエンディングになってしまっております。実業之日本社から発行された「完全版」では、2つとも楽しめますので、ゼヒこちらをチェックしてみてください。


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