タナカリョウの穴あきブック

第10回「拝啓、画太郎先生」

皆様、新年あけましておめでとうございます。
昨年は格別のお引き立てを賜りまして、感謝の言葉もございません。
本年も、何とぞよろしくお願い申し上げます。
住所を知らない皆様へ、年賀状代わりです。よろしく〜。

さて、今回でこのコラムも10回めを迎えます。毎回アンケートでは高い評価を頂きまして、大変光栄に思っております。今回は10回記念と言う事で、いつものような作品の紹介ではなく、私が敬愛する漫画家のひとり、漫★画太郎先生をピックアップしてご紹介致します。ランチしながら読もうかな、なんて呑気なアナタ、若干読みづらいところがありますので注意して下さいね。

さて。
ウダウダ言う前に、まずこれを御覧下さい。

これは昨年発売された「わらってごらん」からのひとコマです。

汚い。
気持ち悪い。

そう思ったアナタの感性は、至極まっとうなものです。

が。

ここまで五感に訴えかける絵、なかなかお目にかかれません。今さら「あいだみつを」風に仕上げたというセンスにも脱帽ですが、小気味よいリズムでページをめくる事ができるように計算された絶妙な展開。微妙としか言い様のないオチ。画太郎先生の集大成ともいえるこの作品は、もはやアートの域です。

これが僕の提唱する「画太郎アート説」です。あと10年も立たないうちに、海外からも注目を集める、だろう、多分、なっ?(ちなみに「そんなかおにあいませんよ〜」というこの形式は「いやしババァ」という作品が初出です。「ハデーヘンドリックス」物語という漫F画太郎名義の短編集に収録されていますので、ぜひともチェックして下さい。)

さて、どんどん行きますよ。
数々の作品をお出しになっている画太郎先生の作品には、いくつかのキーワードが存在します。
「ババァ」「うんこ」「暴力」「血」「すっぽんぽん」「ゲロ」

「裸一貫」…「ハデーヘンドリックス物語」収録
ほとんどの作品に共通するこれらの絵づらは相当酷いです。彼の絵の凄いところは、その酷さをさらに曝けだしているところ。美男美女の華麗な恋愛を描く類いのものとはまさに正反対。

あえてマイノリティな方向へ進もうとする、画太郎先生の反骨精神でもあります。近年になって、「地獄甲子園」や「ババアゾーン」が映画化され再評価されているようですが、実写映像では画太郎ワールドを再現する事は不可能です。両作品とも拝見しましたが、如何せん綺麗すぎる。一般的な美的感覚、その真逆をつくスタンス。それこそが画太郎ワールドの本質であると僕は思います。所詮、映画館で上映できるような代物ではないのですな。そこのところを、監督はわかっていません。言うなれば、我々日本人などが「アナーキー・イン・ザ・UK」をどれだけ忠実に再現したところで、結局それは「パンク」でも「アナーキー」でもない。本質的なことなのです。

メッセージがある様に見えて、実は無いものもあるんです。一見メッセージがない映画や小説に対して「隠れたメッセージ」があるはずと目を凝らしてしまう。それは全ての表現にあてはまる事ではないんですね。そんな幻想を抱きがちである我々を嘲笑うかのようなスタンス、めちゃカッコイイと思いませんか。

そう。そういった意味で、画太郎先生は間違いなく「アナーキー」。
これこそ、僕が提唱する説その弐「画太郎ピストルズ説」であります。
最後に提案する説がこちら。

「画太郎ヒップホップ説」
DJプレミアという男を御存じでしょうか。ギャングスターのDJ兼プロデューサーとして名を馳せたのですが、世界中を震撼させた彼のサウンド、その手法は「ワンループ」と言われます。50〜70年代のジャズ、そのハイライトにあたる1小節、あるいは最も目立たない1小節。それらを延々とループさせ、独特のグルーブ感を描くのです。まあ、これは一例に過ぎず、基本的にヒップがホップするサウンドとは1小節でも2小節でも4小節でも「ループ」という要素が不可欠。トラックメイカーさんのセオリーでもあります。どの曲をどう抜くか、という部分にセンスが浮き出るんですね。

さて、これを御覧頂きましょう。

「たのしい遠足」
「画太郎先生ありがとう」収録
お気付きですか?最初のページの下3コマを、以降の4ページにわたり使用している事を。最初の小さいコマを1ページに伸ばしているために絵が荒くなっている事を。

これが、画太郎先生が多用する「ループ画法」です。手抜きではない、すべては計算の上でやっている。という言い訳をしながら使う、手抜きの手段です。この例を挙げだすと本当にキリがなく、彼の作品を語る上でいかに重要なポイントであるかは周知の事実であります。そう、画太郎先生はBーBOYなのです。しかも生粋の。







以上。
いつもに増してウダウダとやってしまい恐縮ですが、画太郎先生の魅力を少しでも再確認して頂けましたでしょうか。彼の単行本作品一覧を紹介して、筆を置きたいと思います。


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珍遊記(全6巻)
まんゆうき(全2巻)
地獄甲子園(全3巻)
珍遊記 不完全版(全4巻)
つっぱり桃太郎(1〜5巻、続刊中)
道徳戦士超獣ギーガー
くそまん
画太郎先生ありがとう
ハデーヘンドリックス物語
樹海少年ZOO1
地獄大甲子園
わらってごらん
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