タナカリョウの穴あきブック

第9回「飽きない秋無い」

いやはや、もう12月。めっきり寒くなってきましたね。
紅葉も「あっ」という間に終わっていたし、何やら季節のサイクルが変わり始めている気がする今日この頃です。特に秋。今年は虫の声が少なかったように思うのは僕だけでしょうか。微かに異なる2種の音色のハーモニーを聞かせてくれるスズムシ、「ギーッチョン、ギーッチョン」という鳴き声がたまに「リーットン、リーットン」と聞こえるがゆえに藤原と水野の顔が浮かび上がってしまうキリギリスなどなど、風物詩であるハズのものに、今年は巡り会った感触がないのは残念です。基本的に虫、キライなんですけれど。

昆虫が持つパワーというものは、体積比で考えると、生物の中で最も強い部類に入るそうです。確かにあの大きさでも噛まれると相当痛い。あれがもし人間並みの大きさだったらと思うとゾッとします。イナゴの大群なんて、そりゃもう……。ヤツラはヤツラで、おそらくは「意思」を持っていると、僕は思います。セミに「ウルサーイ!」と怒鳴ると2秒ほど鳴き止むし、蚊に至ってはこっちが瞼を閉じた途端に耳元へやってくる。そのうち、人間による世界の転覆を試みるんではないかと。そうなったら、多分、負けでしょうね。

今回ご紹介するのは、同じく「ムシ」と読むのですが、「虫」ではなく「蟲」。ナウシカじゃありませんよ。この世に存在する、人間から見れば不可解な現象。それは「蟲」の仕業なのです。ってな感じ?


「蟲師」作・漆原友紀 1〜5巻 続刊中 講談社アフタヌーンKC

「蟲」と呼ばれる存在がある。「下等で奇怪、見慣れた動植物とはまるで違うとおぼしきモノ達。それら異形の一群をヒトは古くから畏れを含み、いつかしか総じて『蟲』と呼んだ。」。

水彩画の表紙に惹かれて購入。何の予備知識も無いまま読みふけったのですが、コレ、かなり、イイです。自らが「蟲」を引き付ける体質ゆえ、日本中を徘徊する「蟲師」、ギンコ。あらゆる土地で出会う不思議な現象。それの主たる要因であり、時にはツールとしても用いられるのが「蟲」。田舎で語り継がれるような「いい伝え」、柳田國男でいうところの「民間伝承」の正体。時に人を苦しめ、時に人を虜にする。それらを通して描かれる人間愛。オムニバス形式で進むストーリーはどれも暖かく、深い読後感を与えてくれます。

主人公であるギンコも、ストーリーの中ではあくまで脇役。「ギャラリーフェイク」に近いかな。2003年には文化庁メディア芸術祭優秀賞受賞、という肩書きもついています。同人誌系の人々からも評価が高いようで……。なんだか忙しい毎日を過ごされている方々、たまにはこんな和製ファンタジー作品で、息抜きをしてみてはいかがでしょうか。じいちゃんばあちゃんに、会いたくなりますよ。

余談になりますが、僕の友人は「家に座敷童がいる」と言い張っています。妖怪って、多分、いると思う。八百万の神がソレだとも、思う。幻のヘビ・ツチノコも「ノヅチ」という妖怪らしいですね。僕の住んでいる奈良県には「べとべとさん」なる妖怪がいるそうです。後ろから足音だけが近付いてくる、というだけのものらしいですが……どなたか、日本妖怪ツアーに行きませんか?


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