タナカリョウの穴あきブック

第7回「変化」

プロ野球が大詰めを迎えていますな。今年は激動の年でしたね。セ6パ5→セ6パ4→セ5パ5と、逐一状況が変わる中、結局は新規参入を認めて現状維持。古田、あんたはエライ!本当にスゲエと思います。仙台の新球団にも注目ですが、四国に独立リーグも出来るとかで、なにやら色々楽しみです。ちなみに大木凡人は古田のイトコなんですね〜。ボンちゃんは「結婚式で司会をさせてもらえなかった」と今でも嘆いているようですが、古田は彼のことをあまりよく思っていないみたいですね。しかし、古田は学生時代、ボンちゃんによく飲みに連れて行ってもらったとか。栄枯盛衰。

話がそれましたが、大きい流れというものが、世の中にはあると思います。文化から政治経済、様々なスパンがありますが、物事は常に流動していますね。服の流行色や人気タレントといった庶民レベルのものから、戦争や経済危機など国家レベルのものまで。

自分を取り巻く環境が急速に変化しようとする時。その流れに適応するか、一石を投じるか。スタンスを否応なく決めざるを得ない状況、それは個人にとって最大の正念場だと思います。が、その決断は、他でもない自分自身で下さないといけません。それは並大抵のことではないかもしれない、だからこそ人は悩み、苦しむのですね。

話がやや抽象的ではありますが、一番分かりやすいのが、近代の「日本」です。日本という国は、徳川時代、恐ろしく平和な時期を過ごしたあと、帝国主義の流入という事態に巻き込まれました。「幕末」の混沌とした状況、そこにあった様々なドラマは、数々の物語となり、今なお現代人の心をアツくしています。

「幕末」を語るとアツくなりすぎてしまうので、それはまた、別の機会に。今回は、その少し後。同じく大きな波の最中に生きた人々を描いた、「ホンマにオススメ」な名作をご紹介。


『坊ちゃん』の時代」 関川夏央・作 谷口ジロー・画 全5巻 双葉社

夏目漱石といえば、「坊ちゃん」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。破天荒な性格の熱血教師を描いたユーモラスな作品と見られがちですが、「山嵐」との仲を「赤シャツ」によって引き裂かれそうになるなど、権力闘争や陰謀の存在も見え隠れします。これは、「情熱」によるパワーのみで「体制」に受け入れられ難くなってしまった、漱石自らの体験を投影したといわれています。「マドンナ」の存在も含めて。

坊ちゃんは、あがいた。が、時代に勝てなかった。

漱石のみならず、新しい流れが押し寄せてきた明治大正の頃には、ほかにも「坊ちゃん」のような心境の人が少なくなかったことは、想像に難くありません。

この「『坊ちゃん』の時代」は5部制の長編。夏目漱石→森鴎外→石川啄木→幸徳秋水→夏目漱石と、巻ごとに主となる人物がそれぞれ異なっています。神経性の胃痛と自らの身の生き方に悩む漱石。禁断の恋と伝統の狭間で揺れる鴎外。金銭問題が絶えないのにプライドだけは一人前の詩人・啄木。社会主義を啓蒙し、時代に一石を投じようとした秋水…。数々の著名人も、モチロン登場します。菅野須賀子、北原白秋、田中正造やスリの銀二、清水の次郎長、伊藤博文、東条英機、二葉亭四迷…。交錯する感情、苦悩。フィクションのところも多いのでしょうが、めちゃめちゃローマンティーック! 「時を同じくして〜」という時代表現の手法に、かなりヤラれました。




大きい流れがあることを体で知り、自らが流れの中心にいることを、切実なまでに受け止めている彼らだからこそ、その葛藤は計り知れません。自らの意思と、その「流れ」とのギャップ。それを埋められる者、埋められない者…。その顛末は、結果として残っているだけであり、是非を問うものではありません。彼らの心境を自分に置き換え、共に悩んでみるという遊びを楽しめるのが、現代人の特権。ありがとう。



「MANZAIブーム」の頃、島田陽七氏はこんな心境だったんだろうなぁ…。



自らの意思で決定すること。
その決定が仮に時代に抗えなかったとしても。
そこに、後悔は生まれない、と思ったりするわけで。


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