タナカリョウの穴あきブック

第5回「ちょっと待ったコール」

………暑い。

桃山に住んでいる、気温の変化に弱い友人は、1日に50回ほどブツブツ言っております。
温暖化進行中?

年々弱っていく地球の防衛力。そんな深刻な状況を脳の末端では認識しながらも、クーラーガンガンで毛布に包まって毎晩眠りについている私ですが、皆様は100%熱帯夜の日々、いかがお過ごしでしょうか?

科学技術の進歩により、快適な生活を送ってきた(一部の)人類。その代償として、自然環境の危機を迎えていることに気づき、近年ではエコロジーな意識も世界的に定着。自然保護を訴えるNPO団体も勢力を増してきているようです。日本でもディーゼル車規制など、行政的な改革が進んでいます。ゴミ分別は人としてのモラル。みなさん、サランラップのカッターは、切り取って燃えないゴミですよ〜!そんな流れがあるわけですが、故・中島らも氏の意を継ぐアナーキストとして、今回はこんな作品をご紹介します。


「しわあせ」 作・山田芳裕 講談社 全1巻

2033年。人類は宇宙にもその活動の幅を広げていた。そのかたわら、大地と共に生きる、アボリジニーのような生き方が流行となり、人気職業No.1は八百屋という時代。エコロジーという感覚が人々のDNAレベルまですりこまれていた。人々はタバコを吸わず、争いごとをせず、温和な「いい子」達ばかり。理想郷が完成したかのような、平穏な世界であった。

しかし、そんな「きれいな」世の中の風潮に納得できず、時代に取り残されているジジイがいた。彼の名はジュン。1980年代、いわゆるバブル絶頂期に青春を迎えた彼にとって、世の中は恐ろしく退屈なものであった。革ジャン&皮パンでハーレーを乗り回し、あるときはダブルのスーツを完璧に着こなす。怒る。殴る。ダーティーでワイルドな素行は、家族をはじめその時代に生きる人々にとって新鮮であり、ジュンの意向とは逆にもてはやされてしまう…

そんなジュンの晩年の生き様を圧倒的なタッチで描いた作品。

「80's」という、現代で考えるとかなり「?」な事象が多い、極めて微妙な時代。昔撮った自分の写真が恥ずかしいっと思うのは、つまり自分や時代の価値観が変化した、ということなんです。しかしジュンは違う。価値観に流されず、貫いている! まさに漢(おとこ)。不器用とさえ言える感覚。幕末の志士たちに近いものがあります。感動! ワーッ!!

今思うと「恥ずかしい」かもしれない過去、それを含めて自分を肯定できる精神力を、僕は養いたいと思っています。中学生時代の精神構造なんて、誰しも恥ずかしいもんですが…。尾崎、サングラス、コンドーム、エトセトラエトセトラ。

世間の流れに逆らって生きるということは、なかなか出来るものではないですよね〜。何よりその前に、その「流れ」自体を客観的に分析し、自分の考えへと昇華する能力さえ、現代社会では培われにくいと思います。反逆すればよい、という少年の叫びとはちと違う。時代の流れに「ちょっと待った」コールを言えるのか??? だからこそ、ジュンのような精神力は憧れです。プロ野球1リーグ制、民主党躍進、「流れ」がどちら向きにあるかは別として、僕も自分の意見を持ちたいものです。



追記

B.S.Pから復刊したこちらは、未収録分3話を追加しています。作品としてのエンディングもちゃんとあり。装丁も豪華! ぜひコチラでチェックを。







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