タナカリョウの穴あきブック

週3回はBook Off  週に5回は紀伊国屋
捨てられないと知りながら  埋め尽くされるマイルーム
ひとりニヤリとほくそ笑む  涙じわりと滲みだす
我の血となり骨となる  明日の糧へと今日もまた…

レコードと書籍の所有数が平行して増加。生まれながらのコレクター・タナカリョウが「穴があくほど」読み倒した愛すべき名作達を、このコーナーでご紹介していきたいと思います。

第1回 「恋の門」羽生生純・作 全5巻 エンターブレイン




一発目なので、今回はマジメに…
「人はみな、表現者である」
こんな言葉を発した偉人がいたかどうかは知りませんが、私は常々こう思っております。物心がつき、成長していくにつれ、人は「自分とは何か」という問題に直面することになります。そして「そうあるべき自分」を目指して、生き方を自ら選択していきます。今の「自分」を「自分」たらしめているのは、他ならぬ「自分」の選択によるものだと思います。

「自分」を表現する方法は千差万別。夢の実現を目指すこと、職業を選択すること、恋人を探すこと。個性の数だけそのバリエーションは存在します。

しかし、今現在においては、自己表現ツールとして、音楽やアートなど、いわゆる「芸術」的な範疇に入る手段を選ぶ人が苦労をしているというケースが多いといえます。なぜか。他人の「価値観」に左右される割合が、ほかより高いからです。なぜその割合が高いと苦労をすることが多いのか。

お金。

現代社会で生活して行く上で、必ず付きまとってくるのが、お金。
理由はともあれ、多くの人が「良い」と思わなかった「作品」、あるいはその場にすら立てなかった「作品」。それらは残念ながら、お金にはならないわけです。もちろん、「自己表現」とは直接「職業」や「お金」に結びつかなくてはならない、というものではあないと思います。が、出来ることならそうありたい、と思うのが本心であるはずです。その気持ちが強いほど、その表現に対する比重が高ければ高いほど、必然的にリスクは大きくなります。こうした「お金」の問題によって、我々は多かれ少なかれ、アイデンティティに揺さぶりをかけられるという現実に直面することがあるのではないでしょうか。

少々前置きが長くなりましたが、羽生生純(はにゅにゅうじゅん)氏による本作「恋の門」は、そんな自我と現実の間で苦しむ男女の物語です。
俗世間の流行はもろともせず、「石を使った漫画」という表現に断固たるプライドを持つ自称「漫画芸術家」、蒼木門(童貞)。同人誌で絶大な支持を得るインディーズ作家「ノイコ」の顔を持ち、アニメやコスプレを心から愛するOL、証恋乃。

あまりにも自意識過剰な二人をつなぐもの、それは「漫画」だけ。しかし、それは手法ですら異なる、正反対のベクトルを示すものでした。そんな男女の間で生まれた恋、それはあまりにも不器用で、あまりにも美しいものでした。

厳しい現実をつきつけられる二人、時に反発しあい、ときに交わりあう。「表現者」なら誰でも目をそむけたくなる痛々しいその姿。僕はそんな彼らに激しい共感を覚え、思わず涙を流してしまいました。ソークライ。バットソービューティフォー。

誰しも胸をアツくする、北●悦吏●も真っ青のこれぞまさしく純愛ストーリー。「表現者」の皆様、ぜひともお目通しを。

ちなみに映画化も決定しています。監督・脚本は「大人計画」の松尾スズキ氏(イエィ!)。門役は松田龍平(イエィイエィ!)、恋乃役は酒井若菜(イエィイエィイエィ!!)です。僕の好きな役者(アイドル)さんばかり。松尾氏自らも、本作のキーパーソン、毬藻田役で出演します。楽しみ。


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